
田代陽一さんの茶畑は、川根の斜面に段々と連なっています。祖父の代からこの場所で茶をつくってきました。
「毎年、同じようにはつくれません」と田代さんは言います。冬の寒さ、春の雨、摘む日の天気。条件が違えば、蒸す時間も揉む強さも変える。去年うまくいったやり方を、今年そのまま持ち込むことはしない。
めざすのは「余韻まで澄んでいること」。飲み込んだあと、口のなかに何が残るか。渋みが尾を引かず、甘さだけがしずかに続く。その一点のために、摘採の時期も、蒸しの三十秒も、毎年ととのえ直します。
「おいしい、と言われるより、また飲みたい、と言われるほうがうれしい」。三代目は、そう言って笑いました。

